「夜間排尿に効果があるのは八味丸だけです」という
コマーシャルを耳にしました。
正しい一面もある一方、症状によっては誤った治療に
結びつく可能性があり、国際中医師のレベルまでに
中医学を学んでいる方なら以下のことを考えるでしょう。
まず、夜間排尿の病理を考える必要があります。
病理要点は腎気不固です。
腎気不固は腎気が収まる力が低下する病理状態を指し
腎の気化作用の一つです。
腎気が開くことで排尿が行われ、治まると排尿が止まるという
バランスをとる、これは腎の気化作用の役割の一つです。
夜間排尿は腎の働きが弱いことにより、腎気の開く状態が優勢になり
治まる方が弱くなる病理状態を反映する症状でもあると考えられます。
この病理状態は腎気不固によるものです。
臨床症状では疲れやすい、腰と足がだるい、子供なら成長が遅い
骨が折れやすい、記憶力の低下(重い場合に認知症になる)などが見られます。
腎気不固は腎陰虚と腎陽虚に分けられています。
鑑別要点は、腎陰虚は体に火照りがある、尿はやや黄色、寝汗
舌の色が赤っぽいという特徴があります。
腎陽虚は体が冷える、尿は透明、舌の色が淡いという特徴があります。
八味地黄丸は腎陽虚による腎気不固の夜間排尿の治療に適応している方剤です。
知柏地黄丸は腎陰虚による腎気不固の夜間排尿の治療に適応している方剤です。
従って、腎陰と腎陽の概念が欠け、症状の特徴を見落として
腎陰虚に八味地黄丸を投与したら更に病気が酷くなる恐れがあります。
誤って用いた場合、排尿の回数が多くなる、尿の色が更に黄色くなり
酷い場合に尿痛も出てくるなどです。
このような現象をひき起こさないために国際中医師の責任は重いと思います。