国際中医師の仕事・就職と開業

国際中医師は漢方相談の事業展開に必須の資格です。国際中医師資格によって顧客からの信頼と漢方製剤への理解が得られます。国際中医師資格は漢方を仕事にする上で重要です。

漢方相談を事業展開する

漢方相談を中心に事業展開をされているクリニック、薬局薬店などの場合は、国際中医師の取得は必須です。漢方相談の看板を掲げても、その根拠になるものが示せなければ顧客との信頼につながりません。
国際中医師は、中医学を系統的に学習した証明になるものです。

日本では、漢方製剤は大別すると処方箋とOTCの漢方薬があります。
処方箋の漢方は主に傷寒論、金匱要略、日本の古来漢方などが含まれ、OTCの漢方は中国の明の時代から作られた有名な処方が多く含まれています。

処方箋の漢方薬は投与の症状群が重要視されて、一見すると弁証論治にあまり関係のないように思いますが、弁証論治の立場で処方箋の漢方薬を理解する力があると多方面に応用ができるようになります。

OTC漢方は、中医テキストに詳しく紹介されるものもあり、処方に含まれる生薬の数も多いのが特徴です。病因病理とポイント症状、配合の特徴などを整理整頓していくと力がつきます。

看護師と国際中医師

看護師が国際中医師資格を取得するためには、以下のステップで進むことが一般的です。看護師として持ち合わせている基礎医学知識は中医学の学びに一定程度役立ちますが、国際中医師の資格取得には中医学特有の知識を学ぶ必要があります。

病態の総合的な理解

看護師としての解剖学や生理学の知識と、中医学特有の理論(気血・陰陽や臓腑学説など)を統合することで、病気を体全体のバランスの観点からも見ることができます。
例えば、同じ疲労でも中医学的に「気虚」か「血虚」か診断することで、体質や生活習慣に合わせたより効果的なケアやアドバイスができるようになります。

自然な治療法の選択

中医学では、薬膳や漢方薬、鍼灸など自然療法を用いるため、現代医学の治療法に比べ副作用が少ない選択肢を提供できます。看護師の視点からは、西洋医学的な薬の治療が適さない患者や、慢性的な症状で悩む患者に対して、自然療法を選択肢のひとつとして提案することができます。

患者に合わせた個別化ケア

中医学は個々の体質や生活環境に合わせた治療を重視するため、看護スキルと合わせることで、一人ひとりに最も適したケアが可能です。例えば、同じ症状でも、年齢や生活環境、体力の違いから、異なる漢方薬やアドバイスを行うことができます。これにより、患者の満足度が高まり、健康管理の質も向上します。

健康維持・予防的ケアの提供

中医学の観点からは、症状が出る前の予防的なアプローチを大切にします。看護師が中医学の知識を持つことで、患者に早期のケアや健康維持のアドバイスができるため、病気の発症を防ぐ役割も果たせます。特に、生活習慣の見直しや体質改善のためのアドバイスを行うことで、長期的な健康管理に貢献できます。

包括的な医療チームの一員としての役割

看護師が中医学の知識も持つことで、医療現場では、現代医学と中医学の橋渡しを行う役割も担えます。現代医学では対処が難しい症状に対して中医学の観点からアプローチしたり、漢方や自然療法の選択肢を医療チームに提案したりすることで、治療法の幅を広げ、患者のQOL(生活の質)向上に貢献することが可能です。
このように看護師としての専門性と中医学の知識が合わさることで、患者にとって信頼できるトータルヘルスサポートを提供できるようになります。

薬剤師と国際中医師

薬剤師が国際中医師資格を取得するメリットは、現代医学の薬学知識と中医学の知識を融合し、より広い視野から患者の健康をサポートできる点にあります。以下、具体的なメリットを説明します。

治療の幅が広がる

薬剤師は通常、薬物治療を中心とした知識を持っていますが、中医学の知識を持つことで、患者に対してより自然な治療法を提案することができます。たとえば、漢方薬を用いた体質改善や慢性疾患へのアプローチができるため、西洋薬では効果が薄い、または副作用が懸念される場合の代替案を提供できます。

漢方薬と西洋薬の併用に関するアドバイス

漢方薬と西洋薬は相互作用のリスクがあるため、薬剤師としての専門知識と中医学の知識を兼ね備えることで、併用時のリスク管理が可能です。例えば、漢方薬の生薬成分と西洋薬の代謝経路の理解を活かし、安全な処方と併用アドバイスを行うことで、患者に安心して服薬してもらうことができます。

患者の体質を重要視し、証候や症状に合わせたオーダーメイドのケア

中医学では患者の体質や生活環境に合わせた個別化が重要視されるため、薬剤師が国際中医師の知識を持つと、患者の体質を認識して症状の特徴から証候を判断してから適切な漢方薬を選ぶことができます

これにより、患者一人ひとりに適したアプローチが可能になり、特に慢性疾患や体調不良が続く患者に喜ばれるサポートが提供できます。

健康相談・予防ケアに対する対応力の向上

中医学は予防を重視するため、薬剤師が中医学の知識を活かして健康維持や予防についてアドバイスができるのも大きなメリットです。たとえば、季節ごとの体調変化に対応した養生法や、日常生活での健康維持のための食生活アドバイスなど、漢方薬局での相談に応じるスキルが身につきます。

キャリアの幅が広がる

国際中医師資格を持つことで、一般の薬剤師よりも専門性が高まります。漢方薬局や自然療法クリニック、健康相談センターなどでの活躍の場が広がり、他の薬剤師との差別化が可能です。また、漢方薬を活用したアドバイザーや教育の分野でもキャリアの選択肢が増えます。

患者からの信頼性の向上

中医学の専門知識がある薬剤師は、患者から「より信頼できる専門家」として評価されやすく、漢方相談でも「本格的なプロフェッショナル」として認知されやすくなります。これにより、患者からの相談も増え、患者満足度の向上や薬局の評判アップにもつながります。 薬剤師として中医学の視点を取り入れることで、健康相談や処方においてさらに多面的なサポートが可能になり、患者に対する貢献度がより高まります。

国際中医師の働く薬局

漢方薬への注目が高まるなか、適切な処方を行うことのできる国際中医師への需要も高まりつつあります。国際中医師の働く薬局をご紹介します。

このページの著者

董 巍(とう ぎ)

中医学アカデミー長、世界中医薬学会連合会常任理事、中医薬学会連合会理事長、中医師

経歴: 1959年生まれ。 遼寧中医薬大学卒業後、大連第三人民病院内科学中医内科で医師として勤務。 1990年に日本へ来日し、日本医大丸山ワクチン・薬理教室の客員研究員を務める。 その後、日本中医薬研究会の講師を経て、特定非営利活動法人「中医薬学会連合会」を設立し理事長に就任する。翌年には中国 世界中薬学会聯合会常任理事も兼任。 2011年に世界中医薬学会聯合会認可のもと中医学アカデミー を設立し、国際中医師の育成と中医学の普及に力を注いでいる。