挟痰証とは、痰を伴う病証を指します。
痰証は、臓腑の機能不全、気血の障害などによって水湿、津液が凝固し
それによって痰が生じ、痰濁が体内に留まることにより、様々な病状が引き起こされる病証です。
まずは、病理産物である痰の生成について復習しましょう。
痰の生成は、肺脾腎及び三焦などと密接に関係しています。
肺は主に治節し津液が散布されて通調水道の働きが水液の散布や輸送、排泄を
調節しますが、肺が治節を失い、宣発粛降作用が失職し、
水液の散布や輸送排泄ができなくなると、停聚して痰飲となります。
脾は水液の運化を主り、脾虚で運化作用が無力であれば
水湿も運化されず停聚して痰飲となります。
腎は水を主り、水液を管理します。
腎虚で主水ができなければ、津液の蒸化の力が足りず、水は気化できず痰飲となります。
三焦は水と気が通行する道路であり、三焦が通暢の働きを失うと
気と水は止まって動かず、水と気が互いに結びつき、痰飲になります。
古人は「脾は痰の源であり、肺は痰の器である」と考えていました。
『景岳全書・雑証膜』には、「五臓の病の中で、どれも痰を生むことができるが、
主に脾腎と関与する。大体脾は湿を主り、湿が動くと痰となり
腎が水を主り、水が氾濫して痰になる。痰の形成するのは脾であるが、
痰の根本原因は腎にある。だから、およそ痰証は、必ず脾腎とかかわっている」と書かれています。
痰による病気は変化が多く、以前は「病気の多くは痰に関わる」
「頑固な病気は痰と多く関与する」、「百病はみな痰によるもの」という見方がありました。
また、痰証の臨床表現は複雑で中医学では、形のある痰(有形の痰)と
形のない痰(無形の痰)とに分けています。
形のある痰(有形の痰)は視覚的に見ることができ触ることができ、
または聴くことができる有声の痰または飲があります。
粘稠なものを痰といい、清稀なものを飲といいます。
有形の痰は狭義の痰証または痰飲に属し、有形の痰の多くは、
肺気の咳逆で痰を吐くことやまたは胸脇、腹腔および四肢の水飲が留まるので、
実質的な痰液または水飲が視認できます。
形のない痰(無形の痰)とは、実質的ではない痰と飲を指すが、
見えない「痰」により引き起こされる各種症状は例えば頭眩、眼花、悪心、
嘔吐、背冷、短気、心悸、癲狂、意識不明、手足麻木、半身不随などがあります。
痰飲の処方薬で見えない「痰」による病気に対しての治療は非常に有効であるため、
形のない痰は広義の痰とも呼ばれます。
従って、「百病の多くは痰によるもの」、「痰は病気であり、痰は病気である、変化は多い」などの
論説は臨床の治験に基づいて提起されたと考えられます。
痰証は虚実に分けられます。
一般に、実痰の特徴は、病期が比較的短く、形気が強い、声が高い、脈が滑で有力を呈し、
虚痰は、病期が比較的長く、形気が比較的弱い、声が低く静かで、脈は細滑で無力が特徴です。
虚痰証は主に肺虚挟痰証、脾虚痰盛証、腎虚痰盛証、陰虚挟痰証などがあり
順次虚痰証について紹介します。
中医学とは