鄧鉄涛先生を悼む 高血圧への中医治療

鄧鉄涛(とうてつとう)先生が、2019年1月10日の朝、104歳でお亡くなりになりました。

ご存知ない方も多いかもしれませんが、
鄧先生は中医学発展のために力を尽くされ、後進の育成に貢献をされた人物です。
中医治療の腕は素晴らしく、同時に人として器の大きな先生でした。

生前、先生は、「私は中医学のための人間です」と話され、後輩たちの臨床活動を応援するために、
ご自分の数十年間にわたる経験の結晶である有効な60処方を無料で公開しました。

古くから著名な中医師は自分の処方を秘密にする傾向が強くあり、
鄧先生のこのような行為は本当に珍しく、先生の人間性に敬服する次第です。

ここで、公開されている高血圧への処方を紹介します。
鄧先生は高血圧の治療のために四つのタイプに分けて異なる処方を作りました。
今回は肝腎陰虚の高血圧への漢方処方を紹介します。
配合量は原文のまま掲載いたします。

桑寄生・何首鳥・南蛮毛・竜骨(先煎)・牡蠣(先煎)各30g

川芎・淫羊藿・杜仲各10g

この方剤は、肝と腎の陰陽が不足で
肝陽上亢が誘発されてひきおこす諸症状に用いられます。
例えば、血圧が上昇する、頭痛、眩暈、上半身の火照り、目が充血するなどの症状や、
また、腰がだるい、疲れやすい、頻尿などの症状が常にみられます。

桑寄生と何首烏は肝腎の陰を補い、淫羊藿と杜仲は主に腎陽を補い、
川芎は疏肝活血に、南蛮毛は清利胆肝、竜骨と牡蠣は肝陽の過剰な上昇を抑えます。

処方の特徴は肝腎不足という「本」、肝熱と肝陽の「標」を同時に治療すると考えられます。