肝の蔵血という働きを文字通りで理解すると肝に血を蓄積する
という意味かと想像するのですが、実は違います。
蔵血は血の貯蔵だけではなく、血液を血管の外へ出ないようみする(摂血)
全身へ血の供給の調節(血液量の調節)、肝の陽気が過度にならないように
コントロールする、肝の疏泄作用を支援する、などの働きが含まれます。
蔵血作用を理解しなければ、肝腎同源の意味を
深く理解しようと思ってもできません。
例えば、摂血作用が不調になると月経時の経血量が多く、
月経の周期が早まり、目の充血などが現れます。
運動時に急にめまいや立ち眩みなどがあれば、血液量の調節の故障の現れです。
脇腹の痛み、怒りっぽくなる、ため息が多くなるなどは
疏泄作用の応援が故障した際の現れです。
蔵血作用の意味を理解することで、故障時に現れる症状を把握することに繋がり、
治療方法の正しい決定に欠かせないと考えられます。
蔵血の故障による肝鬱の治療の場合、逍遙散ではなく
四物湯を中心にした処方にすることは蔵血への理解によるものです。
蔵血の意味を理解するからこそ、肝腎同源の奥深い意味を理解するようになります。
従って、中医学の専門用語は弁証論治の土台だといっても過言ではありません。