考える 中医学

漢方薬は中医学の弁証論治に基づき、ひとりひとりにオーダーメイドの治療を
施すことで最も高い効果を発揮します。
しかし現在ではエキス剤の発展と共に大量に生産され本来の力を発揮できない
ケースも見られます。
大量生産により普及した漢方は、もうオーダーメイドに戻れないのでしょうか?
もちろんそんなことはありません。
中医学の原点に立ち返れば、今でもオーダーメイドの治療はできるのです。

2018年9月4日の日経新聞の一面に【考える工場 日本勢反攻】の掲載がありました。
記事には、『工場の生産ラインが需要動向や製造品目を自ら判断する
「考える工場」の実現が近づいてきた。自動化が進んで人が減り、製造コストも
下がる。人件費が安い国に工場が移る過去半世紀の流れが逆流し、先進国に
生産地を戻す動きも起きている。』とありました。

これまでのコストを抑えた大量生産の仕組みから、「lotで多品種少量」の時代に
入るのだという。この記事を読み、中医学による弁証論治によく似ていると感じました。

中医学は、独特の理論形体があり、この理論を運用するには多くの組み立て部品が
必要になり、それぞれの状態に合わせて細部にわたり使い分けなければなりません。
人の体質、病気の部位、性質、程度などから病状を診断し、その人の現在の状態に
合わせて生薬を選択し、配合の割合を考え方剤を決めます。
そして治療を考え処方を施し、腕のよい中医師であれば未病を防ぐことまで
念頭にいれ治療に当たります。
このような特徴が、まさに「lotで多品種少量」だと思います。

1970年代頃から漢方のエキス剤が普及し始め、中医学の弁証論治を基本とする
「オーダーメイド」の治療方法は少しずつ遠のいてしまいました。

例えば、中医学の履修程度が浅い方でも漢方薬が販売できるよう、
「風をひいたら葛根湯」というような「病名診断」による漢方の普及が広まりました。
これは漢方薬を広める良いきっかけになりましたが、実際は誤った使い方による
副作用が生じたことも事実です。
漢方薬の「能書」をもとに、患者に出すようになるという傾向が顕在化しています。

私たちは、中医学の原点を忘れず「考える中医学」を提案します。
その一つが「国際中医師」です。
「国際中医師」は、中国衛生部が国際的に許可した名称で、
「世界中医薬学会聨合会」の国際考試部が本試験の開催と認定を行っています。
国際中医師試験は、世界各国の方を対象に自国で中医学を系統的に学んだことを
証明する試験です。
これによって中医学の習熟度の程度が評価されます。
※世界中医薬学会聨合会は、WHOに加盟している学術団体です。

中医学を系統的に学び、その上でよりよく漢方薬が用いられるよう、
中医学アカデミーは、効き目の良い「オーダーメイド」ができる人材を育てる
事業をさらに強化していきたいと思います。

◎参考 日本経済新聞2018年9月5日(水)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO34937850T00C18A9MM8000/

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