傷寒論は紀元後150年ごろ、名医・張仲景(ちょうちゅうけい)が黄帝内経の理論を活かして臨床経験を纏めて編纂したもの。外感病の治療に対して六経弁証という方法に関する理論を体系化した書物です。
『傷寒論』とは、どのような書籍か?
『傷寒論』は、後漢時代(紀元後150年ごろ)の名医、張仲景(ちょうちゅうけい)先生は黄帝内経の理論を活かして臨床経験を纏めて編纂されたそうです。この書籍は特に外感病(体外からの刺激によって引き起こされる病気)の治療に対して六経弁証という方法に関する理論を体系化した書物です。
六経弁証は、『傷寒論』に基づく中医学の診断体系の一つで、外感病(風邪やインフルエンザなどの外部からの病邪による疾患)の病状の進行を6つの段階に分類し、それぞれに適した治療を行う方法です。六経(ろっけい)は、太陽・陽明・少陽・太陰・少陰・厥陰の六つの病証に分けられます。
六経の分類と特徴
六経 | 特徴 | 主な症状 |
太陽病 | 初期段階で表証である | 発熱、悪寒、頭痛、項強(首のこわばり)、無汗または汗が出る、脈浮 |
陽明病 | 裏熱証 | 高熱、口渇、大量の発汗、便秘、腹満、脈洪大 |
少陽病 | 病邪が体の表と裏の間に停滞(半表半裏という) | 寒熱往来(熱と寒が交互に出る)、胸脇苦満、食欲不振、口の苦み、咽喉の乾燥、脈弦 |
太陰病 | 脾胃虚寒 | 腹満、食欲不振、冷え、下痢、脈沈遅 |
少陰病 | 陽虚証と陰虚証 | 陽虚証:四肢の冷え、極度の疲労、微熱、下痢 陰虚証:不眠、口渇、心悸亢進、手足のほてり |
厥陰病 | 病邪が深部に入り、陰陽が乱れる | 手足の冷え、吐き気、下痢、腹痛、意識障害、極端な症状の変化(寒熱錯雑) |
まとめ
六経弁証は、病気の進行を6つの段階に分け、適切な治療を行うための診断方法です。病状の変化の特徴を的確に捉え、弁証論治(病状の分析と治療法の決定)を行うための重要な指針となります。
『傷寒論』では、患者の症状群の特徴を「証候(省略して証)」として観察し、その証に基づいた治療を行うことが重要とされています。この方法論が弁証論治の基本とされます。
現代においては、『傷寒論』は、現代の中医学においても重要な位置を占めており、多くの医療現場で活用されています。特に、患者の個別の症状や状態に応じた治療を行う際の指針として、中医学の基盤となる理論を提供しています。
傷寒論を正確に理解するためには、中医基礎理論、中医診断学、中薬学、方剤学などの知識を深く学ぶことが必要です。