中西医結合(ちゅうせいいけつごう)は、中医学(伝統中国医学)と西洋医学を統合し、互いの長所を活かす医療のアプローチです。中国では政府主導で進められ、現在では多くの病院や大学で採用されています。
中西医結合の流れ
19世紀後半、西洋医学が中国に導入されました。1929年に「廃止中医案」(中医学を廃止し、西洋医学を正式医療とする政策)が提出され、これに対し、中医師たちが強く反発し、中医学の近代化を目指す動きが生まれます。 1930年代には、一部の医師が中医学と西洋医学の併用を試みるようになって、これは中西医結合の発祥として考えられます。
1949年以降、毛沢東は「中医学を廃止せず、西洋医学と融合させるべき」と指示し、「中西医結合」が政府の公式方針となり、中医学と西洋医学を統合する研究・教育が進められます。
1956年から北京、上海、南京、成都、広州、瀋陽などに「中医学大学」を設立され、1960年から「中西医結合病院」が設立され、臨床での融合が本格化されます。
文化大革命(1966年〜1976年)での混乱で中西医結合は一時停滞。その代わりに「赤脚医生(はだしの医者)」が農村医療を担うことになって、中西医結合に関する医療レベルがかなり低下します。
1980年代以降、本格的な中西医結合の研究が進み、中医学の科学的分析が進み、「中西医結合学」が正式に大学教育の一分野として確立されます。
2010年代〜現在、AIやビッグデータを活用した中西医結合の研究が進んでいます。
中西医結合の成果(成功例)について
(1)がん治療の補助療法
放射線治療・化学療法(西洋医学)+ 中薬(中医学)の併用で、副作用を軽減。例えば、白血病患者の治療で、中医学の弁証論治で化学療法による副作用(嘔吐、倦怠感)を軽減するとともに、化学療法の効果を高めます。
(2)感染症治療
2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)や2019年の新型コロナウイルスで、中医学の弁証論治が治療に活用された。例えば、「連花清瘟(れんかせいおん)」などの漢方薬がウイルス感染症の補助療法として使用されています。
(3)慢性疾患の治療
糖尿病、高血圧、関節リウマチ、自己免疫疾患などの慢性疾患で、中医学の弁証論治による中薬の投与や食事療法、また鍼灸を組み合わせた治療が効果を上げています。例えば、糖尿病の患者に、メトホルミン(西洋医学)と漢方薬を併用し、血糖コントロールを改善。
(4)手術後の回復促進
手術後の回復を早めるため、中薬や鍼灸を活用。 例えば胃がん手術後に、消化機能を回復させるための弁証論治による中薬を使用。
残った課題(批判や問題点)について
(1)エビデンス不足
一部の中医学治療は、西洋医学の基準(RCT試験など)で証明され難い治療法も多くあります。 技術の発展により証明できるように期待されています。
(2)診断基準の標準化
中医学の「証(しょう)」の診断基準が医師ごとに異なる場合があり、WHOがICD-11で中医学の基準を採用したが、国際的な標準化はまだできていません。これから中医診断の標準化が期待されています。
まとめ
中西医結合は、1950年代から中国政府主導で進められ、がん治療、感染症対策、慢性疾患の管理などで一定の成果を上げています。しかし、エビデンスの不足や診断基準の不統一などの課題もあり、今後は科学的研究の強化が求められます。