麻子仁丸は薬局で販売され、また病院でも
処方される有名な漢方薬の一つです。
特に高齢者の便秘に使用されることが多いようですが
効かなかった場合に、更に続けて服用してもらう、また
服用量を増量することを勧められたら
使用する側としては、少し疑問符がつきます。
日本では、麻子仁丸の配合薬は麻子仁5g
杏仁2g 大黄4g 厚朴2g 枳実2g 芍薬2gです。
中医学で麻子仁丸は胃に燥熱があり、津液を
傷つけたことにより生じた便秘の治療に用いています。
弁証要点は大便が固く、排出が困難で頻尿を伴い
舌紅、黄苔乾燥などです。
麻子仁は使えないケースは疲れやすい、腰がだるい
自汗が多い、冷えがある場合です。
もし、薬局やクリニックで便秘以外の症状について
何も聞かず麻子仁丸を出したら、中医学の
レベルを怪しんでも良いと思います。
中医学は、慢性の病気に対して体が、熱いか、寒いか
弱いか、詰まっているかなどを判断する必要があります。
専門用語で表現すれば、寒熱虚実を判断できるか否か
とても重要なことです。
麻子仁丸は燥熱と陰虚の両方があり、虚と実があります。
一般では、虚は、気虚か、血虚か、陰虚か、陽虚の
違いがありますが、臨床では、さらに
どの臓腑かの分野までに深く検証します。
臓腑は五臓六腑があり
五臓は脾・肺・肝・腎・心、
六腑は胃・大腸・小腸・胆・膀胱・三焦です。
麻子仁丸の燥熱は胃にあり、麻子仁丸の陰虚は脾にあります。
冷えと腰がだるい症状があれば、腎陽虚の可能性があると考えられます。
疲れやすく、自汗があれば、気虚の可能性があると考えられます。
陽虚と気虚でも慢性便秘を引き起こすことも多くあります。
気虚と陽虚の便秘の治療に麻子仁を投与しても当然に効かないですし
さらに気虚と陽虚の病証を悪化させる可能性が高いと考えられます。
五臓六腑、虚実と寒熱などの基本的な中医学の
知識を身に付けずに臨床に立つことは本当に怖いことです。
中医学の勉強は土台から始めてこそ、本当の力が身につきます。