「疲れやすい」は虚証だけか?疲れやすいの表現にご注意!

虚実を判断する際に確認する症状に「疲れやすい」があります。
例えば、「疲れる」と聞いた場合は気虚か腎虚か虚証を考慮し、
それを根拠に次に問診すべき内容を頭の中で整理します。

補気薬にするか補腎薬にすべきか…。
補気薬であれば、六君子湯、補中益気湯、生脈散などを、
補腎薬であれば六味丸、八味地黄丸、鹿茸大補丸、参茸補血丸などを
浮かべて更に問診を続けます。

でもちょと待ってください。

中医学の臨床弁証の原則に「一症多因」があり、
これは、「一つの症状には必ず多くの病因病理を潜んでいる」という考え方です。

問診のテクニックも必要ですが、「疲れやすい」の言葉の裏側に
まだまだいろいろな状態が隠れています。
一つの症状にいくつかの原因があることを忘れてはいけません。

ある方の症例を例に紹介します。
日頃からいつも疲れて仕事中に集中力が足りないと感じ、
また眠いといった症状もあって薬局相談に来られた男性。

最初は栄養剤などを飲んでみても効かず、六君子湯、補中益気湯、
生脈散なども効かないので
補気薬の力不足ではないかとも考えたそうですが、
なんと更に補腎薬を試して頂いたそうです。

疲れやすいと訴えた男性に補気薬と更に補腎薬を追加したところ、
結果は皆さんお判りになりますか。
この方の症状は、ますます悪化したとのこと。
どうしたらいいのでしょうか。

「疲れ」を誘発する原因は気虚と腎虚のほかに
湿邪、瘀血、肝鬱気滞などもあり、疲れ=虚証と
盲目的になったしまったことが失敗の原因です。

「疲れ」あるいは「だるい」といった表現には
実は注意が必要です。
例えば湿邪の場合、体が重いと感じることがあり、
これが「疲れ」と同様に表現される場合が多くあります。

問診の際には、疲れの他に随伴する症状群をしっかり確認すべきで、
虚証だけではないことが念頭にあればミスを防ぐことができます。
気虚と腎虚の鑑別、気虚或いは腎虚と湿邪の鑑別、気虚或いは腎虚と瘀血の鑑別、
気虚或いは腎虚と肝鬱気滞との鑑別などを身に着けなければ、
正しい判断に繋がらず、漢方薬の誤用を生じやすいと考えます。

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